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早期発見が大事!治療開始の遅れは生命予後の悪化につながる

HIVは人間の免疫機能において重要な役割を担うCD4陽性リンパ球という免疫細胞に感染して、徐々に破壊していくウイルスです。CD4陽性リンパ球がHIVによって破壊されることで免疫機能が悪化するため、通常では問題とならない病原体にも感染しやすくなり、代表的な23の疾患を発症した時点でエイズと診断されます。

エイズは1981年にアメリカで初めて報告されて以降、世界中に感染拡大しており現在3,690万人がHIVに感染していると言われています。エイズの発見当初は有効な治療法が確立されていなかったため、エイズ=死の病という負のイメージが先行していました。しかし、現在は様々な抗HIV薬が開発されたことに加え、ARTという症状や体質に合わせて抗HIV薬を組み合わせて服用するという治療法が確立したことで、血液内のウイルス量をコントロールして免疫機能を維持することが可能となりました。医療機関を受診して、医師や医療スタッフと共に適切な治療とフォローアップを受けることで、通常の日常生活を送ることが可能となっています。

しかし、通常の生活を続けるためには、エイズ発症前に治療を開始する必要があります。日本では、HIV検査による早期発見の重要性が叫ばれているにも関わらず、HIV検査を受ける人は増加していません。実際に、帯状疱疹やカンジダ症などのエイズを代表する病気を発症してから、HIV感染を知るというエイズ患者がHIV感染者の約3割を占めています。エイズを発症した患者が、HIV治療を全く受けない場合の余命は2~3年と非常に短命です。また、エイズを発症してから抗HIV薬による治療を開始した場合は、一定の効果は期待できるものの、重篤な疾患を発症する可能性も残されています。その場合、後遺症が残ったり、最悪の場合は死に至ることも考えられます。したがって、エイズ発症前の感染初期や無症状期に、HIV感染を発見して治療を開始することが重要です。

また、エイズ未発症の場合でも、治療開始の遅れはQOL(生活の質)や生命予後の悪化につながります。医療機関におけるHIV治療では、定期的なフォローアップにより血液内のCD4陽性リンパ球の数を調べることで、治療効果を確認しています。CD4陽性リンパ球は免疫機能において重要な役割を果たしているため、HIV治療の効果の指標のひとつとなっている免疫細胞です。このCD4陽性リンパ球の数が治療前の段階でどの程度あるのかによって、治療開始後のCD4陽性リンパ球の数の回復に影響を及ぼすことが明らかとなっています。実際に、血液内のCD4陽性リンパ球の数が350/μL以上ある段階で治療を開始するのと、350/μL未満で治療を開始するのでは、明らかに前者の方がエイズ発症率が低く、生存率が高いという研究データも存在します。つまり、エイズ未発症の中でもCD4陽性リンパ球の数が一定以上ある方が、免疫機能を回復させやすいため非感染者と同じような生活を送れる可能性が高くなるということです。HIVに感染した場合、治療を行わない限りHIVは1日で100億個ずつ増殖しながらCD4陽性リンパ球を破壊し続けます。したがって、CD4陽性リンパ球の数が多い段階で治療を受けるためには、一刻も早く検査を受けて医療機関を受診することが必要です。

様々なメディアでエイズ=死の病ではないという報道がされていますが、それはエイズ自体が治る治療法が確立されたというわけではありません。あくまで、早期発見して早期に治療を開始するという条件付きであり、エイズ自体は未だに治療が難しい病気であるという正しい認識を持つことが重要です。また、HIV感染者の中でも発見が早いほど、医師や医療スタッフのサポートによって生命予後を良好にできるという認識も同時に普及させることも求められます。